秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
テレビ局の前まで行くと警備員もいるし怪しまれるから私は道路を挟んで拓海がいないかな、とウロウロしていた。

…これって、付き合ってなかったらストーカー行為だろうか。

こんなところまで来ているくせに実際に彼を一目でも見れたらそれでいいと思った。
ただそんなタイミングよく彼を見られるはずもなく、30分ほど経過して私は仕方がなく帰ろうと踵を返した。

と。

「うわ、」

男性にぶつかってしまい、私は体勢を崩してしまう。
ごめんなさい、と顔を上げると、向こうも深々と帽子をかぶり眼鏡をかけていた。
もしかしてテレビ局の近くだから芸能人では、と思った。

私はなるべく目を合わせないようにしてその場を離れようとしたが、

「これ、落としてるよ」
「あ!すみません、ありがとうございます」

ぶつかった拍子で拓海に購入したTシャツを落としてしまい、それを男性が拾ってくれたようだ。

「もしかして、出待ちかなんか?」
「あー、いえ、違います…」

彼は高身長で目元はよく見えないけどそれでも顔が整っていることはわかる。それにオーラもあるからやはり普通の人ではなさそうだ。

と、ここで私は気づいた。

「あ…マサト…だ」

目の前にいる彼が拓海と同じくイケメン俳優として今引っ張りだこな人物だということに。
でも私はすぐに、何でもないですと言って去ろうとした。
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