恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

「え?どうしたの、」

明らかに困惑した声色に私も視線を下げてしまった。
千秋さんは私を抱きしめようとしたその手をそっと元の位置へ戻した。

「夕飯の支度をしますね~」

と声だけ明るくして千秋さんの横をすっと通り抜けた。千秋さんの視線を背中に感じながら罪悪感で押しつぶされそうだった。
…あぁ、何してんだ私。

でも触れられる、そう思った瞬間に私の脳裏には夏希くんとのキスの映像とあの悪魔のようなセリフがリピートされて拒んでしまった。
好きっていうつもりだったのに…。

熊の絵が描かれた可愛いエプロンを首にかけて(これは引っ越してくる前から使っていたもので、新しく買ってもらったエプロンもある)

出かける前に飲んでいた紅茶のティーカップ等をキッチンで洗った。
ジャーっと勢いよく流れるお湯でティーカップを洗っていると千秋さんの気配がして顔だけ後方へ向けようとした。


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