恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「じゃあ、ごちそうさまでした」
「うん、また」
「俺がいるとき”だけ”いつでも来ていいよ」
「わかってるって」

玄関ホールまで夏希君を見送った。
結局、夏希君はお兄さんが大好きなんだと思う。だからあのデートの時もわざとわかるように千秋さんに伝えていた。
一旦は諦めると言っていたけど、多分…もう私に手を出そうとなんかしないような気がした。
…まぁ、ちょっと何を考えているのかわからないところがあるから注意しているけれど。

バタンとドアが閉まって、私はカギをかける。

もうお風呂に入らないといけない時間になっていて、私は踵を返しリビングに戻ろうとした。

…でも。

「っ」

振り返るとすぐに千秋さんがいてなぜか立ち止まったままだ。

「あの…わ、」

すぐに腰に手を回されて私は引き寄せられた。
それは一瞬で、抵抗する間もない。近い距離で千秋さんに見下ろされて、一気に緊張感が走る。

「まだ慣れてくれないんだ?」
「なれる…とは?」
「だって俺が触れるとすぐに体も顔も強張らせるでしょう」
「…そんなことは、」

それはあなたがそんな色っぽい目で見つめるから悪いのだ。誰だって緊張してしまう。



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