恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「うちは顔採用だからさぁ。昨日面接に来た子も一発で採用したよ」
「…そうですか」
「いや~最近桜子ちゃん目当ての人、増えて来たよね。この間、桜子ちゃんの休みの日に”あの子はいつ出勤ですか”って聞いてきた男性いたよ?」
「へぇ、そうですか」
「人の話聞いてる?僕一応君の店長だよ」
「聞いてます聞いてます」

桜子ちゃんはボブヘアがよく似合う小柄な女性で、採用してからすでに数か月が経過していた。
小柄なのに彼女の存在感は大きくて、常連客だけじゃなくて新規のお客も彼女目当てに通う人もいる。


でも桜子ちゃんは僕には塩対応でお客さんが少なくなってきたから雑談しようと思って話しかけるけど、はいはいと適当にあしらわれるのは気に入らないな。

桜子ちゃんが皿を洗っている横でぺらぺらと一方的に話しかけていると、チャリンと鈴の音が聞こえてお客さんが来店したようだから反射的にいらっしゃいませと声を出す。


「あ、桜子ちゃん!」
「もう~なんですか?さっきからずっと喋ってますけど…」
「君の旦那さん来てるよ」

ゆっくりと店内に入ってきたのは、あのイケメンの旦那さんだった。
初めて見たときは驚いた。身長も高くて端整な顔立ちの彼はまるで漫画の主人公のように完璧な男性だと感じた。
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