恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「あ、そうだ。午後から弟が来るんだよ」

―弟

そういえば一人っ子じゃなくて同じように起業家の弟がいるんだっけ。
彼も同じ業界だとか。
私にコーヒーを入れてくれてそれを飲みながら聞いていた。

「じゃあ私も挨拶した方がいいですよね」
「そうだね。でもなーあいつはね、結構人とかかわるの嫌いなんだよ」
「そうなんですか?」
「うん、だから不愛想な態度でも許してね」

そういって優しく微笑んでくれる朝宮さんにドキッとしてしまった。
相変わらず細くてきれいな指をしていてそっちの方が気になってしまう私は指フェチなのかもしれない。

ちょうど弟さんの話をしているとインターホンが鳴った。弟だ、そう言って立ち上がる彼を目で追う。
しばらくすると玄関ホールから声が聞こえてくる

「いきなり結婚なんて聞いてねぇよ」
「そりゃそうだよ。言ってないし」

何やら兄とは対照的な口調に緊張してきた。
…不愛想って言ってたしなぁ、軽く挨拶して部屋にいた方がいいかもしれない。

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