恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

男性に触れることが出来てそれが嬉しくて、手だけじゃなくて他の部位も大丈夫なのか確かめたくなった。

「他もいいでしょうか！」
「…他？」
「はい！他の部位も…」
「え？…いいけど…」

私は体を彼に近づけて、先ほどと同じように腕に触れた。
両手で触れても嫌な感じはない。克服したのだろうか、もう大丈夫なのだろうか。

ベタベタと触るのも失礼かもしれないけれど、克服したのかどうなのか確かめたい衝動のほうが強くなって

「…桜、子？」
「すみません！もう少し、」

胸、腹部、太もも、…首、に触れる。

「…大丈夫、だ…」

よかった、克服したのかもしれない！そう思ってパッと顔を上げると同時に私の肩を掴んで真剣な表情を向ける朝宮さんに私は首を傾げた。
…ダメだったのだろうか。
嫌、だったのだろうか。

ごめんなさい、そう言おうとしたら

「そういうのは、誘ってるって誤解されるよ」
「え…」
「桜子が誘ってるっていうのならこのまま続けてもらっても構わないけど」
「…そ、そんなつもりは…ないです」

恥ずかしくなって俯いて、彼から手を離した。

「面白いな、本当に」
「そうですか？」
「うん、君みたいな人に出会ったことないよ」

続けて彼は言った。

「あ、そうだ。朝宮さんって言い方もうダメだよ」
「え？だって、」
「君だって朝宮だからね」
「…そうだった」
「下の名前で呼ぶこと」
「はい」

千秋さんか…。そう呼べばいいんだよね。呼べるかな。
ドキドキするなぁ、それに触れても平気だった。
きっと千秋さんだから、なのかもしれない。