闇に咲く華
第7章 落花流水の華












姫野で話を聞いて帰宅した次の日。
外に出ることができた私は、荒れることなく、過ごせていた。

「ただ、いつ何が起こってもおかしくないよね…。」

優杏さんには、一週間後に戻った方がいいかもって言われたけど…。

私自身いつかは戻らなきゃって思ったけど…。

長く清宮に居すぎたのね。
甘えすぎてたのね。

だから、離れがたい…。

「わからないように、身辺整理していかないとな。」

ふと、スマホが鳴っていることに気がつく。

満里奈だ。
やばい…学校にも連絡いれてなかった!
恐る恐る電話に出る。

怒られること承知で声を出す。

「もしも…。」

『体調大丈夫なの!?』

遮られた声に驚きながらも、怒ってないことにさらに驚く。

『ちょっと、聞いてるの?』

「あ、怒ってないの?」

『は?樹さんから、体調不良でしばらく休むって連絡あったから…。海の後あんなことがあったし…、』

私の言葉に呆れたように返すと思ったら、後半は申し訳ないような声色になっていた。

申し訳ない気持ちが、勢いよく押し寄せてくる。
幼い頃から、保護者がわりをしてくれている樹さん。

海での出来事を思いだし、自分で対処できなかったことに後悔する。

また迷惑かけてしまってる…。

『ま、元気ならいいの。学校にこれるようになったら連絡してね!』

その後も他愛のない会話をして、恋愛話にも花が咲き、気が付くと、電話が来てから2時間がたっていた。

またねと話して電話を切ると、メッセージが入っていることに気がつく。

ー莉依さん、体調はいかがですか?ゆっくり体を休めてくださいね。椿ー

2人の優しさに心が暖かくなる。

私が思いに耽っていると、またスマホが鳴る。
今日は連絡が続くな、と思いながら笑う。

「翔ちゃん?」

メッセージには、一週間後の25日に出掛けないかという連絡。

その日は私の19歳の誕生日。

そして、姫野に戻る日…。

「別れがたくなるな。」

でも一緒に出掛けたい気持ちが勝り、承諾した。
幼い頃から清宮で、嬉しいときも悲しいときも、全てここで過ごしてきた。

そして、翔ちゃんを好きになった。

翔ちゃんの素っ気ないけど、優しい姿に惹かれてしまったのだ。

「長い長い片思い…か。」

それも後一週間で断ち切らないといけない。
姫野に戻るということはそういうことだ。

組長に就任するということは、組の皆を守るも当然。
恋などなうつつをつかせる暇はない。

でも、幼い頃から育った大きな恋心は、簡単には消せない。

時間がかかるとわかっているが、消さないとー…。










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