お姫様は恋してる?
たわいのない話をしながら、香子の最寄り駅に着くと駅のベンチに座る大柄な男が目に入った。

「鈴木主任…」

香子の声に気付いて、そいつがスマホから顔を上げる。

「香、遅かったな…その人は?」

俺に気付いて、目付きが鋭くなる。

思い切り牽制してやがる。

なぁんだ。こういうやつが香子の近くにいるじゃないか。

香子の口ぶりじゃ、気持ちに気づかれていないようだが…

「今日の合コンで…」

「そっか。今日、俺が直帰で約束出来なかったから夕飯、誘おうと思ってアパート来たけど留守だったから駅で待っていたんだ。まぁ、なんだ。俺は用がなかったって事だな。」

勘違いさせて香子のチャンスを潰さないために、生まれかけていた気持ちを胸の奥にねじ込んだ。

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