【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

少しだけ棘のある言い方をしたら、伊織さんは「お、おお…」と肩をすくめた。
これじゃあ私が桃菜に意地悪をして苛めているみたいだ。 気分が悪い。
しかし桃菜は悪びれる事は一切なかった。

「え~、それじゃあ桃菜が嘘ついてるみたいじゃ~ん。 真凛ちゃんひどいの…。そりゃあ真凛ちゃんは人見知りしなくって誰とでも仲良くなれるかもしれないけど、桃菜はそうじゃないもん…」

唇を尖らせて拗ねた素振りを見せる桃菜は、さり気なく伊織さんの服の袖をぎゅっと握る。
そして上目遣いで伊織さんを見つめるのであった。

「まあ、余りに酷いようだったら碧人に言ってくれ。
さあ、ご飯食べよう。 今日は珍しくお腹が空いている。」

サッと立ち上がった伊織さんを見上げた桃菜は、むぅっと頬を膨らませた。
桃菜は怯む事なく伊織さんに話を掛ける。 だから伊織さんも訊かれた事には嫌な顔せず答えていた。


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