【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
私が夕ご飯の準備をしているのを尻目に、リビングでは伊織さんと桃菜が楽しそうに会話をしている。
天真爛漫で人見知りを一切しない桃菜は、すっかりと伊織さんと打ち解けてしまっている。
楽しそうにお茶を飲む二人の姿を見て、どっちが夫婦か分からないと思う。 これじゃあまるで私家政婦さんだし…。
「従業員の一人や二人首にする権限はある」
「伊織さん、すごぉ~い!さすがです!」
ふふんと得意げな伊織さんの顔を見て、ついつい苛々としてしまう。
ソファーの上で隣り合って座り、桃菜は笑いながら伊織さんの腕を軽く小突く。 桃菜が来てから苛々したり胃がキリキリして、モヤモヤは募って行く一方だった。
「ご飯できましたよ。 それから桃菜いい加減な事ばかり言うんじゃない。 パートの人皆良い人じゃない。
いくら教えても桃菜がちゃんと仕事しないで店長とばかり話し込んじゃっているからでしょう?
伊織さん、桃菜の話をまともに聞かないで下さいね。 本当に良い人ばかりで働きやすい環境なんですから首にしたら絶対に許しませんから」