【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
悲しい声が響くのと同時に、彼の腕が緩まる。
伊織さんと向き合うと、やっぱり彼は悲しそうな顔をする。 嫌だ、そんな顔しないでよ。こっちが泣きそうになるじゃない。
だからやっぱり涙が出そうになるのをぐっと堪えて、笑顔を無理やり作った。 私が泣いたり弱音を言えば、周りを困らせるだけなのずっと知っていたから。
「当たり前じゃないですか。 伊織さんもおじい様やおばーちゃんの約束の事なんか気にしないで
私と別れる事になっても、伊織さんの夢であるお店を開けるようにおじい様は説得しますから。
だから契約の事や約束の事は気にしないで。 伊織さんは自分の好きな道を好きに歩いて下さい」
「…約束とか、契約の事を言ってるんじゃない。 俺が訊きたいのは君の気持ちなんだ…」
「そんなのっ…」
伊織さんが余りにも真剣な顔をするものだから、笑顔が段々と引きつっていくのが分かる。
それを見られないように彼から顔を背けた。
「とにかく、私は大丈夫ですッ。
色々な手続きは小早川さんを通してしましょう。
じゃあ、私はこれから用事があるので失礼します」