【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「小早川さん、ありがとうございます」
「俺の方こそ。 真凛さんには感謝しています。
市ヶ谷会長には恩がありますし、伊織も俺にとって大切な友人です。
だから真凛さんが現れてから、ずっとあなたには感謝しっぱなしなんですよ」
小早川さんの優しい言葉が、私の背中を強く押してくれた。
すぐに家に帰らなくちゃ。 きちんと、伊織さんと話し合おう。強がりなんて捨ててしまって、今あなたにめいっぱい甘えたい。
小早川さんと別れてから明海のマンションに戻って事情を説明しようと思っていた帰り道。
久しぶりに母からの電話で、彼女は悲鳴のような泣き声を上げていた。
祖母が暮らしていた老人ホームで息を引き取ったとと訃報を聞いたのは、余りにも突然の出来事だった。