優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
私の言葉を無視して立ち去ろうとした壱哉が背を向けたまま、言った。

「日奈子をこれ以上、傷つけるな。これは忠告だ」

忠告?
まるで私が壱哉の敵みたいじゃない。

「壱哉さん、どこに行くの?」

「おい、壱哉!婚約者を置いてどこに行く!どうしたんだ」

両親の声にも耳を貸さず、招待客は壱哉の様子がおかしいと囁いていた。
理由を私は知っていたけど、誰にも言いたくなかった。
それは私が妹の―――あの鈍臭い妹に負けたなんて絶対に認めたくなかったから。

「水和子さん。こちらにきてちょうだい。親戚に紹介するわね」

「はい」

さっきのことなど、何もなかったかのように私は振る舞った。
帰ればよかったのに自分の意地や見栄がそうさせてしまった。

「素敵なお嬢さんでしょう?こちら、水和子さんと言って、壱哉とは昔からの付き合いなんですよ」

そう、昔から壱哉の隣にいるのは私だった。
今さら、私が壱哉の相手じゃないなんて周りはなんて思う?
笑いものになるなんて、ごめんだわ。
笑われる役はいつも日奈子なのよ、
そう決まっている―――いつだって。

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