優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

専務室の前に仕掛けられた監視カメラにはスマホを持って階段の方へ行く私とその後、営業二課の課長が部屋に入っていく様子が映し出されている。
そして、水和子お姉ちゃんが使っていたパソコンには削除されたはずのデータが復元され、そのファイルには差し替えるための書類を作成したデータが残っていた。

「日奈子を罠にはめて、婚約者を名乗るなんてな」

冷ややかな目で壱哉さんは水和子お姉ちゃんを見た。

「とんでもないことですよ。父さん」

社長まで呼び出されていて、驚きを隠しきれていなかった。
今までお姉ちゃんを気に入ってきただけにショックを受けていて声も出ないようだった。

「俺が日奈子と付き合っているのを知って、嫉妬して婚約者になろうとしたようです」

おじ様は私を見て、それから壱哉さんを見た。

「父さん達が選んだ相手がどんな人間かよくわかったのでは？」

「な、なんだと！？ま、待て。壱哉、お前っ……」

「そういうことですから。日奈子は秘書に戻しますよ」

肩を抱き、放心状態の人達をそのままにして、壱哉さんは私を連れてその場を離れた。

「あ……あの」

「日奈子。大丈夫か？」