優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「今日の取締役会は会議だって言われただろうけど、それは表向きの話。尾鷹商事で働く父や親戚がお兄様を呼び出して、問いただすための集まりよ」

「そんな!壱哉さんは大丈夫なの?」

「お兄様なら平気よ。むしろ、心配なのは日奈子の方よ」

「あ、杏美ちゃん!今、私の事をドン子じゃなくて、日奈子って」

感動していると呆れた顔で杏美ちゃんが言った。

「今から呼んでおかないと、うっかり尾鷹の親戚の前でドン子って呼びそうだからよ」

「そ、そう」

「って、今は呼び方なんかどうでもいいの!問題はそこじゃないのよ!今までは私の友人だから、多少の―――かなりの鈍臭さも許されてきたのよ」

何も言い直さなくても。
しかも、かなりなんて―――そのとおりだけど。
しょんぼりと肩を落とした。

「これからはお兄様の相手として見られるわけ。そこはわかるわね?」

「い、壱哉さんの相手……。私が……。わ、わかります」

かぁっーと顔を赤くすると、杏美ちゃんは呆れた様に言った。

「ドン子はのんきでいいわね……。お兄様の相手ってことは尾鷹家を背負う、つまり町を取り仕切るっていう仕事もあるのよ。わかる?」
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