優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
こんな時なのにその顔を見たら、私のことを完全に嫌いじゃないとわかって嬉しかった。

「日奈子、きらきら星を弾こうか。遊びでやっただろう」

「はい」

「俺が日奈子に合わせるから」

うなずいた。
きらきら星変奏曲―――私は片手だけで単調に繰り返すだけで、ほとんど壱哉さんが弾いていた。
しかも、アレンジまでしてかっこいい。
跳ねる音が瞬く星みたい。
やっぱり、すごいなあと思って横目で見ると、目が合って微笑んだ。
壱哉さんの笑みが珍しいのか、結局、招待客は私じゃくて壱哉さんを見ていた。
そうだよね、かっこいい―――頭がぼっーとなり、ぐらりと体が傾いた。

「日奈子!」

椅子から落ちそうになった身体を壱哉さんが支えてくれた。
おかしいと思ったのか、額に手を触れると、壱哉さんの顔が強張った。

「日奈子。熱が……」

「す、すみません!」

ガバッと起き上がり、慌てて頭を下げた。

「バカは風邪をひかないって嘘だったんだな」

安島常務の言葉にどっと広間に笑い声が広がった。

「本当にバカなんですよ」

「この間も杏美さんが待っているっていう嘘を信じて、ずっと会社前に立ったままで」
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