優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「うれしいわ。私も日奈子にあげるものがあるの」

「なに?」

荷物が置いてあった中から、大きな包みを取り出して、私に渡した。

「池に投げ入れてごめんね」

リボンをほどき、袋から取り出すとウェディングドレスを着たテディベアが出てきた。

「本当は日奈子がお兄様と結婚する時に渡すつもりだったけど」

「可愛い!ありがとう!」

「日奈子。お兄様をお願いね」

私が頼まれている!?
杏美ちゃんに?
変わるものなんだなあと思いながら、うなずいた。

「パーティーの時の日奈子を見たら、きっとなにがあっても大丈夫な気がしたの」

「そ、そうかなー」

なんか、改めて言われると照れる。
リースを指でなぞり、杏美ちゃんは微笑んで言った。

「そろそろ時間だから、支度するわ」

「うん。じゃあ、控え室から出るね」

杏美ちゃんは離れようとした私の手を握って言った。

「日奈子。アップルパイ、また作ってね」

言い終わると、杏美ちゃんはそっと手を離した。

「うん」

杏美ちゃんにうなずき、テディベアを抱き抱えて控え室から出た。

「あ、終わった?」

「はい。ありがとうございます」

廊下で待ってくれていた渚生君にぺこりと頭を下げた。
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