優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「いいよ。じゃあ、チャペルに行って、花嫁さんの登場を待つとしますか」

「杏美ちゃん。すっごく綺麗だったから、きっとみんな、驚きますよ」

「へえ。それは楽しみだな」

チャペルへ向かいながら、アップルパイ、また作らないとねと思いながら、ふと杏美ちゃんが私を一度も『ドン子』と呼ばなかったことに気づいた。
結婚するから、特別な心持ちになったのかな?
それくらいしか杏美ちゃんの違和感に気づかず、まさか、これが杏美ちゃんと交わした最後の言葉になるなんて、この時は思いもしなかった。
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