優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

壱哉さんは難なく安島さんの腕をつかみ、軽く捻ると床に突き飛ばした。

「恥をかかせたところで俺にメリットはない」

「く、くそ！」

「な、なんて乱暴なのかしら！久渡(ひさと)さん、大丈夫！？」

安島さんの母親らしき人が駆け寄った。
殴りかかったのは安島さんの方なのにまるで壱哉さんが悪いとばかりににらみつけていた。

「後から話をしよう！慰謝料は払ってもらうからな！」

「なっ、なにが、慰謝料なんですかっ！」

「日奈子」

私が席から立ち上がったのを見て、壱哉さんが驚いていた。

「そんなのっ！安島さんが悪いんじゃないですか！杏美ちゃんがいるのに他の女の人と浮気するからっ」

しーんと全員が静まり返った。
尾鷹のおじ様もおば様も知らなかったようで安島さんを驚いた顔で見つめていた。

「ここで言うか。なにもできないと思っていたら、とんだ食わせ者だな」

すごい目でにらまれた。
こ、こわい。
渚生君が気づき、間に入ってくれた。

「新婦が逃げたのは事実だ！」

安島さんの言葉に父親らしき人が険しい表情でうなずいた。

「尾鷹が安島を軽んじている証拠だ。許さんぞ」