優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
第40話 安島家の怒り
「大変よっー!あ、杏美(あずみ)さんが控え室にいないの!」

チャペルの友人席に渚生(しょう)君と並んで座り、いつ花嫁が入ってくるのかと入り口を見ていると、入ってきたのは尾鷹(おだか)の親戚のおばさんだった。
しかも、いないって?
さっきまで、確かに杏美ちゃんは控え室にいて、私と話をしていた。
膝の上にテディベアがあるから、夢なんかじゃない。

「なんですって!?」

「どういうことだ」

尾鷹のおじ様もおば様も狼狽(うろた)えた様子で椅子から立ち上がった。
けれど、壱哉さんだけは驚かず、顔にはなんの感情も映し出さず、無表情だった。

「説明を」

「部屋に入ったら、ドレスが脱ぎ捨てられていて、窓が開いてました。窓から外を見ましたが、誰の姿もなく―――」

「駆け落ちか」

壱哉さんがそう言うと、会場がざわめきに包まれた。

「壱哉、お前が仕組んだな!」

安島さんの声かチャペルに響いた。

「なぜ、俺が?」

「安島家に恥をかかせたかったんだろう!」

安島さんは怒りに任せ、壱哉さんに殴りかかった。
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