優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

第４１話 クーデター

安島(あじま)家の動きは早く、数日後、壱哉さんが言っていた通りになってしまった―――
緊急取締役会が開かれ、尾鷹(おだか)のおじ様が社長を解任された。
壱哉さんだけが反対で残りの役員達は全員、安島さんが新しい社長になることに賛成したらしい。
社内には激震が走り、大騒ぎになった。

「安島が尾鷹を裏切るなんて」

「会社の乗っ取りじゃない！」

「社長派は秋の人事を待たずに左遷されるらしいわよ」

「専務もどうなるか」

ひそひそと話す声が聞こえてくる。
壱哉さんも気づいているはずなのに表情一つ変えずに仕事をしていた。
おじ様が追い出されても壱哉さんの仕事量は変わらず、会社にとって、重要な存在であることは安島さんが何をしても変えられないようだった。
安島さんがどんなに他の役員に取り入ったところで、会社から壱哉さんを簡単に追い出すことはできないとわかって安心だったけど、他の人達は―――

「日奈子。今日はもう帰ろうか」

「はい」

いつもなら、定時に帰れないのに仕事を置いて帰るなんて、珍しいことだった。