優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「日奈子はもう会社には行かないほうがいい」

「どうしてですか?わ、私、邪魔ですか?」

「そうじゃない。今日みたいな嫌がらせはこれからもされると思う。だから、会社に行くのは俺だけでいい」

「だめですよ。また嫌がらせされたら、どうするんですか?」

「大丈夫。心配はいらない」

「い、嫌です!なにもできないのはわかっています。だけど、一緒にいたいんです」

「日奈子に何かあったら、相手に何をするかわからない」

「えっ!?」

そ、そっち?

「壱哉さんは嫌がらせされるってわかってるのに会社にいくんですか?」

「祖父と祖母の大切な会社を好き勝手にされるわけにはいかない。祖父が体調を崩して入院している間に会社が安島に乗っ取られたと知れば、気落ちする。せめて俺だけでも会社に残るつもりだ」

「そうですか。でも、壱哉さんの方が仕事ができますから、きっと大丈夫ですよ!」

「どうかな。役員達は結局、安島になびいてしまったからな」

その声は悲しく聞こえて、私はそっと壱哉に触れて、その体を抱き締めた。
昔からよく知っている役員達だけに裏切られたと感じているのかもいれない。
私が思うより、ずっと壱哉さんは傷ついている気がした―――
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