優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
どうしたんだろう。
杏美ちゃんは常務付きだった。
嫌いな人なのかな?
目があうと、杏美ちゃんににらまれた。
殺気を感じる。
怯えているとそれぞれの配属先の上司が迎えにきた。
広報部からは水和子お姉ちゃんがきて、私は声をかけようかどうか迷っていると、お姉ちゃんは私とは違う場所を見ていることに気付いた。
その視線の先を追うとそこには壱哉さんがいた。

「秘書室配属の方は室長の私のところにきてください」

メガネをかけて、髪をアップにした美人な女の人に呼ばれて行こうとすると壱哉さんから腕をつかまれた。

「日奈子。行こう」

「は、はい」

私はいいのかな?と思って秘書室の室長を見ると、その人はうなずいていた。
どうやら、大丈夫みたい。
壱哉さんは私がまた転ぶと思ったのか、手を引いて歩きだした。
去り際に水和子お姉ちゃんを見ると、なぜか水和子お姉ちゃんは私じゃなくて、壱哉さんをずっと見ていた―――
< 20 / 302 >

この作品をシェア

pagetop