優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

「そうだな。そしたら、日奈子は結婚することになるな」

あ、あれ！？

「そ、そうですね」

なにかおかしくない？
壱哉さんは満足そうな顔をしていたけど。
私が『尾鷹の家に相応しくないから』とか『無理です』さえ、壱哉さんは言わせてはくれないのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「安島さんが社長解任されたぞ！」

株主総会がまだ続いているはずなのに決まった途端にその情報が流れた。

「会社の金をプライベートなことに使っていたらしい。それを株主の前で公開されたのが大きかったな」

「それって、下手したら逮捕じゃ？」

「たぶんな。呑海(どんみ)さんも一緒に使っていたらしい」

水和子お姉ちゃんが！？

「もしかすると、呑海さんも罪に問われるんじゃないのか」

話している人達は小声で話す気はないらしく、水和子お姉ちゃんが会社にはもういられないだろうということまで聞こえてきた。

「やっと安島社長の暗黒期が終わったな」

「安島家は一人息子の失敗ですべてを失うことになるか」

「さすがに警察沙汰になると、安島家は尾鷹商事に関われないだろう」