優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
安島さんがやったことは犯罪らしく、役員待遇どころか、会社を追われる―――そんな話だった。

「みんな!新社長は尾鷹専務に決まったぞ!」

社長が決まるなり、駆け込んできた社員がフロア全体に届くくらいの大きな声で言った。
会社全体がホッとしたような空気に包まれた。
どれだけ、皆が心待ちにしていたかわかる。
とうとう壱哉さんが社長に―――

「日奈子さん、よかったわね」

「はい」

よかったけど、まだ会社の中は元通りにはなっていない。
秘書室には今園さんがいないし、広報部から倉庫に飛ばされた人達もそのままで、社長派や尾鷹家に味方した人は冷遇されたまま。
そして、なにより。

「杏美ちゃん……」

今、どこにいるんだろう。
連絡もなにもない杏美ちゃんが幸せでいてくれているのかどうか。
それだけが気になった―――
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