優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
そう。渚生君は週刊誌にスキャンダルを報道されたけれど、その会見でいきなり『この女性と結婚するつもりです』と堂々と宣言した。
今園さんは身寄りがなく、その不幸な身の上を支えて行きたいと渚生君が言った会見は美談の様になり、むしろ人気が増した。

「今園さんとお付き合いされていたんですね」

壱哉さんは笑った。

「あの夜の動物園のおかげでな。最初は仲が悪くてどうなるかと思ったが、日奈子を救出するのに協力したのがよかったみたいだな」

「あ、あの時から」

「ライバルが減って、俺としてはよかったが」

「ライバル!?」

「やっぱり気づいてなかったか」

壱哉さんは机の中から、写真を取り出した。
昔の―――亀の私と王子の渚生君、そして魔法使いの壱哉さんが並んで写真に写っている。

「渚生の親からもらった写真だ」

「待って下さい!この写真はともかく、どうして机の中に!?」

「気に入った写真をミニフォトアルバムで保管してある」

きっぱりと壱哉さんが言った。

「見せてください」

「だめだ」

「どうしてですか!?」

「宝物だからな」

そう言って、写真を一枚しか見せてくれなかった。
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