優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
中身が気になるけど―――壱哉さんが相手では奪えそうにない。

「これ、学芸会の時の写真ですよね」

懐かしいけど……。
他の写真が気になる。
ちらちらと壱哉さんを見たけど、知らん顔された。

「学芸会の時、渚生が王子なんかやりたくないって言い出して本番直前に逃げ出したんだ」

「そっ、そんなことが!?」

「それを知っていたのは渚生の両親と俺だけで、探し回っていたのを日奈子が手を引いて渚生を連れて戻ってきたんだ。あれ以来、渚生は日奈子のことを好きだったみたいだが」

そういえば、学芸会の時、私はいつものように転んで保健室からの帰り道、一人で渡り廊下を歩いていた気がする。
暖かな春の日差しが心地よくて、中庭に寄り道をしたら、木の陰に渚生君が休んでいるのを見かけて声をかけた―――

「思い出しました。でも、てっきり、うたた寝をしているんだとばかり」

「連れてきてくれた時の写真だ、それは」

「たいしたことしてないと思いますけど」

『遅れますよ』だったか『みんな、待ってますよ』だった?
何か声をかけたような気がした。
昔過ぎて覚えていない。
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