優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
濡れた雑巾を投げつけた。
他の秘書達は一瞬息をのみ、静まり返り、私から目を逸らした。
雑巾を拾い、漂白し、乾かす。
私の仕事を奪ったのはいいけど、まったく終わってない仕事の山は後々、彼女達がやる羽目になるというのに。
会食リストに目を通すと昔からお付き合いしていて、気難しい会社にはバツがついていた。
これは取り返しがつかないことになる。
水和子さんに言っても無駄だ。
安島の元に行かなくては。
そう思っていると、ちょうど廊下で安島に会った。

「今園か」

憎悪のこもった目。
自分の父を寝取った女の子どもだと思われているけれど、母の方が実際、被害者だ。
安島の父と付き合う気はなかったのに芸者だった母を妻にし、飽きると捨てて次の女に走った。
それなのに―――安島の家では母は悪者。
きっと『母が誘惑したとでも言ったのだろう。

「安島社長。会食の件ですが、昔から尾鷹との付き合いがある会社を切るのはやめてください。困った時にはお互いが助け合ってきた者同士と会長がおっしゃっていました」

秘書として、安島に接した。
それなのに―――

「指図するつもりか!」
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