優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!

魔女のパートナー※53話

絶対に撮られた。
それは確実。
あんなホテルロビーの衆目の中、キスなんてするからいけなかったのだ。
あの時は勢いでキスを許してしまったが、今、冷静になるとそれは間違いだったような気がする。
正座し、渚生の出演するドラマを観ていた。
『君はあいつと幸せになってよ。俺じゃ、だめだってわかってるからさ』
なんて可愛らしい子犬のような演技。
思わず、泣きそうになった。
このドラマが始まってから、ネット掲示板では御曹司とフリーターどっちをヒロインが選ぶかと論争が繰り広げられていた。
最初の頃こそ、御曹司派が多かったものの、物語終盤に差し掛かり、一気にフリーター(渚生)の方が圧倒的に多かった。
今日は最終回。
どうなるか―――ドキドキしていた。
渚生の演技をみていると、私とのスキャンダルを会長にお願いして握りつぶそうかなどと、思ってしまうのも事実。
それくらい、素敵なのだ。
渚生は。

「本人には絶対に言えませんね」

『私っ―――』
誰を選ぶのかっ!!!
ドキドキしているとCMが始まり、肩を落とした。
いいところで……。
しかも、スマホの着信音が鳴った。
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