優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「あ、そうですよね。いろいろありますよね」

作り置きかあ。
やってみてもいいかも。
今までは学生だったから、時間もあったけど、これからは社会人だし。
仕事で帰りが遅くなったりするかもしれないだろうから、便利かも。

「イチゴか」

デザートのイチゴが入った容器を開けると、ふわりと春らしいイチゴの香りがした。

「お隣の家から頂いたんです。昨日、渚生君が持ってきてくれて」

「渚生が?」

「はい」

「あいつ……」

なぜか、壱哉さんの表情が険しくなった。
あれ?
二人は友達同士だったはず。

「お弁当箱のお礼―――」

壱哉さんは少し考えてから言った。

「今週末、一緒に本屋に行こう」

「は、はい」

ま、まさかっ!
壱哉さんと一緒におでかけ!?
作り置きの本を買ってくれるみたいだけど、これってデートみたいじゃない?―――ってそれはない。
私は秘書!壱哉さんにしたら、毎日美味しいお弁当を食べたいというだけで、仕事の一環なのかもしれない。
舞い上がった気持ちを地面に叩きつけた。
あ、危ない。
うっかり、有頂天になるところだった。

「ありがとうございます。楽しみです」

「ああ」

自分の浮かれた気持ちを誤魔化すようにして、お茶を飲み、うつむいた。
壱哉さんの笑顔は破壊力がありすぎて困るから―――
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