優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「ええ。公私を分けるのは当然のことだもの。この間、夕食を誘った時、壱哉が言っていたから。日奈子のことは自分が面倒を見るって」

「なんだ」

緋瞳お姉ちゃんは笑った。

「壱哉さんとしっかり夜にデートしてるんじゃない」

夜にデート……。
そうだよね。
夕食を二人で食べに行くなんて、さすが大人だ。
私が週末、一緒に出掛けるだけで舞い上がっているのとはわけが違うよね。
しかも本屋だし。

「もう遅れるから会社に行くわ」

「まだ早くない?」

緋瞳お姉ちゃんがそう言ったけれど、水和子お姉ちゃんは首に春らしい薄地のスカーフを巻くと、知らん顔で行ってしまった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


今日もお茶を入れて書類を整頓―――って、私、役に立ってない!?

「あ、あのっ!壱哉さん」

名前を呼ばれて壱哉さんは顔をあげて私を見た。

「なにかコピーするものがあったら、コピーしてきます!」

頑張りますっというオーラを強くだした。

「コピー機の使い方はわかるか?」

「大丈夫です」

マニュアルを熟読したから、たぶん。
このマニュアルを作ってくれた人は仕事ができる人に違いない。
細かいところまで書いてある。

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