優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「うん。いつもより、ふわふわしてる」

ふわふわ?
ま、舞い上がりすぎてるってこと?

「よかったね」

「はい」

にこっと渚生君に微笑まれて言われたせいか、気がつくと素直に頷いていた。
いつもなら、調子に乗らないように自分に言い聞かせるのに。
少しだけなら、いいかなんて思っていた。
家に帰り、夕飯の支度のためにエプロンをつけているとお姉ちゃん達が帰ってきた。

「ただいまー」

「ただいま」

「おかえりなさい」

キッチンから顔を出して、二人に言うと、二人はスッと私を無視して通りすぎて行った。
まだ私のことを怒ってるようで態度が冷たい。
気まずい思いでキッチンに引っ込んで夕食作りにとりかかった。
幸せ気分は一気にしぼんでしまった。
けれど、あれが普通の反応なのかもしれない。
私がもっと美人で頭がよくて、周りが納得するような存在なら、あんな態度はとられなかったはずだ。

「やっぱり、ちょっと調子に乗りすぎたよね」

野菜を切りながら、反省していると両親と姉達が楽しそうに話す声がキッチンにまで聞こえてきた。
リビングを覗かなければよかったのに私はそっとその楽しそうな家族団らんの光景をドアの外から眺めてしまった。
優秀で綺麗な両親と美人な姉二人。
それは完璧な空間で、私が入ることは許されない気がした。
昔から、何度も目にしてきた光景に慣れてしまっていたはずなのに今日が楽しくて幸せだった分、いつもより寂しく感じて、それを見ているのが辛く感じた。
そっとその場を離れた。
所詮、アヒルはアヒル。
着飾っても白鳥にはなれない。
楽しそうな笑い声を耳にしながら黙って、夕飯の支度を始めた。
いつものように存在をなるべく消して。
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