優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「なぜって、役に立っているとは思えませんし、妹が迷惑をかけて尾鷹専務の仕事の邪魔になっているからです」
「専務に秘書を付けてから、雑務が減り、以前よりも早く帰宅されています。お食事を摂らないことも多かったですが、今はきちんと召し上がられています。呑海さんは真面目に働いていて、あなたが心配されるようなことは何もありません」
抑揚のない冷たい声が響いた。
まるで私の心の奥深くまで見透かされたようで恥ずかしかった。
だから、今園室長は苦手なのだ。
「そうですか。妹がきちんと働いているみたいで安心しました。失礼します」
その場を取り繕うような作り笑いを浮かべ、早足でその場を立ち去った。
長く居たくはなかった。
役員フロアの廊下を歩いていると、コピーした書類を持った壱哉と日奈子が歩いてくるのが見えた。
遠目からでも恋人同士には見えず、兄妹みたいでなぜか、ホッとした。
「壱哉」
「呑海?どうしてここに?」
「ちょっと用事があったの。もう済んだわ」
「そうか」
隣の日奈子はおどおどした顔で私を見ていた。
壱哉にこんなコピーした書類を持たせて信じられない。
「ごめんなさいね。コピーも一人で出来ないなんて申し訳ないわ」
「いや、コピーが終わった頃に迎えに行っただけだ」
「量が多くて、それでっ」
「一人で運べないなら、往復すればいいでしょう?」
「う、うん。次はそうする」
日奈子はうなずくと、うつむいた。
「壱哉。フェアが成功したんだから、私と飲みに付き合ってよ?」
日奈子はハッとして顔を上げると、私と壱哉を交互に見た。
「私っ、先に戻りますね。こ、これ、もらいますっ」
日奈子はコピーした書類の山を壱哉の手から奪い取ると、ふらふらしながら抱えて役員室に入って行った。
それを壱哉が心配そうに眺めていたけど、私は構わずに言った。
「壱哉。仕事の成功をお祝いしてくれないの?」
「わかった。渚生の予定を聞いてからまた後で連絡する」
いつも必ず、壱哉は渚生を呼ぶ。
私とは友人であるという自分のスタンスを崩さないように。
「二人で飲みたいの。だめ?」
「誤解されたくない」
「そう。私達、二人でいると噂になってしまうくらいお似合いだものね。昔から」
壱哉の顔を見たけれど、無表情で何を考えているか、その表情からはまったく読めなかった。
「専務に秘書を付けてから、雑務が減り、以前よりも早く帰宅されています。お食事を摂らないことも多かったですが、今はきちんと召し上がられています。呑海さんは真面目に働いていて、あなたが心配されるようなことは何もありません」
抑揚のない冷たい声が響いた。
まるで私の心の奥深くまで見透かされたようで恥ずかしかった。
だから、今園室長は苦手なのだ。
「そうですか。妹がきちんと働いているみたいで安心しました。失礼します」
その場を取り繕うような作り笑いを浮かべ、早足でその場を立ち去った。
長く居たくはなかった。
役員フロアの廊下を歩いていると、コピーした書類を持った壱哉と日奈子が歩いてくるのが見えた。
遠目からでも恋人同士には見えず、兄妹みたいでなぜか、ホッとした。
「壱哉」
「呑海?どうしてここに?」
「ちょっと用事があったの。もう済んだわ」
「そうか」
隣の日奈子はおどおどした顔で私を見ていた。
壱哉にこんなコピーした書類を持たせて信じられない。
「ごめんなさいね。コピーも一人で出来ないなんて申し訳ないわ」
「いや、コピーが終わった頃に迎えに行っただけだ」
「量が多くて、それでっ」
「一人で運べないなら、往復すればいいでしょう?」
「う、うん。次はそうする」
日奈子はうなずくと、うつむいた。
「壱哉。フェアが成功したんだから、私と飲みに付き合ってよ?」
日奈子はハッとして顔を上げると、私と壱哉を交互に見た。
「私っ、先に戻りますね。こ、これ、もらいますっ」
日奈子はコピーした書類の山を壱哉の手から奪い取ると、ふらふらしながら抱えて役員室に入って行った。
それを壱哉が心配そうに眺めていたけど、私は構わずに言った。
「壱哉。仕事の成功をお祝いしてくれないの?」
「わかった。渚生の予定を聞いてからまた後で連絡する」
いつも必ず、壱哉は渚生を呼ぶ。
私とは友人であるという自分のスタンスを崩さないように。
「二人で飲みたいの。だめ?」
「誤解されたくない」
「そう。私達、二人でいると噂になってしまうくらいお似合いだものね。昔から」
壱哉の顔を見たけれど、無表情で何を考えているか、その表情からはまったく読めなかった。