優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「そうみたいってあんたね!自分の事でしょ!水和子お姉ちゃんに迷惑かけるんじゃないわよ」

怒られてしまった。
今日、知ったばかりなのに。
言い返しても勝てないことはわかっていたから、黙り込んだ。
黙っていると緋瞳お姉ちゃんは呆れた様な顔で私を見て、ぽんぽんっと服を投げた。

「これ、クリーニング出しておいて」

「うん……」

クリーニングに出す服を集めた紙袋に服をいれた。
紙袋には家族全員分のクリーニングに出す服が入っている。
お茶をいれてリビングに置いた。
自分が出演しているドラマを何度も見返して、勉強中の緋瞳お姉ちゃんはお茶を飲まずにテレビを熱心にみていて、私をちらりともみなかった。
お礼くらい言ってくれたらいいのにな。
とぼとぼとキッチンに戻って、買ってきた物を冷蔵庫にいれた。
私の家族はみんな、頭が良くて綺麗でなんでもできる。
だから、私は家の中では最下層。
こんな家族の中で暮していても辛いだけだと長年の経験から学んだ私は大学を卒業し、就職したら家を出ようと考えていた。
それが、就職先が決まらずに計画倒れになってしまった。
家族から離れるつもりが就職先は優秀な姉と同じ会社なんてどうしたらいいんだろう。
無職じゃないのはありがたいけど、また比べ続けられるんだと思ったら辛すぎる。
優秀な人にはわからないんだ。
私のこんな惨めな気持ち。同級生にはドン子って呼ばれるし、家では下っ端だし―――キッチンで一人泣いた。
どうして、神様は私にお姉ちゃん達とまではいかなくていいから、せめて人並みにしてくれなかったの?と思いながら。
< 5 / 302 >

この作品をシェア

pagetop