優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「壱哉さんは優しいし、かっこいいし、仕事している姿はもう普段の倍は素敵に見えるし、私が失敗するかもって思うようなことは先回りして助けてくれるのもすごいなって。それに―――」

「もういいわ。身内の褒め言葉ほど、聞いてて恥ずかしいものはないわ」

「えっ!?なんで!?まだあるよ」

「言わなくていいって言ってるのよっ!」

そっか……残念……。
語りたかったのに。

「その気持ち、恋なの?愛なの?」

「深いね……」

哲学かな。
真剣な顔で悩んでいると、杏美ちゃんは額に手をあてた。

「お兄様のこと、好きかって聞いてるのよ。男として」

「女の人じゃないでしょ?」

「当たり前でしょ!?ドン子と話してると、ほんっっと疲れんのよっ!わかってんの?……じゃあ、水和子さんと抱き合ってたって聞いてどう思った?」

「それはショックだったけど……」

「そう、それならいいわ」

杏美ちゃんははあっとため息をついた。

「いいの?」

「いいけど、お兄様に残された時間はそんなに多くはないわよ。立場上、婚約者を決める時期に来ているし、ドン子の淡い恋が愛になるまで待っていられるかしらね」
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