優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
真っ赤なフェラーリが私の横にとまった。

尾鷹(おだか)のおば様」

「仕事、お休みなの?」

「ええ。有給休暇を消化中なんです」

口から出たのは体裁のいい言葉だった。
会社はインフルエンザで今は有給休暇。
けれど、あなたの息子さんにフラれたショックで仕事を休んでますなんて、言えるわけがない。

「ちょうどいいわ。水和子ちゃんに話があったのよ」

車に乗って、とドアを開けられて車に乗った。

「壱哉と付き合っているらしいじゃない。聞いたわよ、社内で抱き合っていたって」

「それは……」

「いいのよ。水和子ちゃんなら。ご両親は二人とも弁護士さんだし、水和子ちゃん自身も優秀でしょう?水和子ちゃんは昔から、勉強もスポーツもできるし、ピアノとヴァイオリンも上手だったわよねぇ」

「趣味程度ですけれど」

謙遜(けんそん)しなくていいのよ。それでね、夫とも話していたんだけど、壱哉もそろそろ身を固めさせないとって言っていたのよ。けれど、壱哉は優秀だけど気難しい所があるでしょう?探すのが大変で。水和子ちゃんと付き合っているってきいて、安心したのよ」

「ありがとうございます」
< 76 / 302 >

この作品をシェア

pagetop