優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「あっ!」

足がもつれ、どさっと膝をついて転んでしまった。
紙袋やバッグが手からすり抜けて遠くに飛んでいった。

「……い、痛っ」

膝から血が出ていて、ストッキングが破れていた。
初日からなにしてるんだろう。
もっと早くに家を出るべきだった。
そしたら、クリーニングも頼まれなかったし、走る必要もなかったし、転ばなかったのに。
自分が鈍臭いのはわかってたはずが、初日からこんな失敗をしてしまった。
家に帰り、手当てしてから会社に行くしかないのはわかっている―――もう遅刻は決定だった。
遅刻して笑われるか、怒られる自分の姿が容易に想像できた。

「もうやだ……」

こんなんじゃ、もう無理―――
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