The previous night of the world revolution~T.D.~
マフィアという職業柄、常に様々な人間からの電話が来るが…。

「…もしもし?」

『♪ぁる♪♪♪ぱい、♪♪♪と♪♪♪さ♪られ♪さみ♪♪っ♪♪る♪ころわ♪♪いな』

まさか、爆音で『frontier』を流しながら、電話かけてくる奴は、初めてだよ。

「誰だ貴様は」

イタ電か?

『♪?ま♪♪、この♪♪♪ン仮面の♪♪♪わす♪♪と♪、さて♪ルシー♪♪♪い、よ♪けつぼ♪♪♪♪であた♪がお♪♪くなっ♪♪?』

「…」

相変わらず、爆音の『frontier』でよく聞こえないが。

「仮面」という言葉が、何故か聞き取れた。

そして俺の知る人間の中で、仮面に由来する人物は、一人しかいない。

「…お前ルリシヤか?」

『♪♪、よ♪♪く分かっ♪♪た♪』

うん、多分ルリシヤだ。

凄いな。「仮面」の一言で、この電話がイタ電ではないことを証明するとは。

何よりも分かりやすい自己紹介だったよ。

それと。

「悪いが、お前が何を言ってるのか、さっぱり分からん」

『frontier』の爆音を、何とかしてくれ。

何処にいるんだお前は?

『♪♪?ちょ♪♪大き♪♪た♪…。すこ♪♪下げたから、これで聞こえるか?』

ちょっと音量が小さくなって、かろうじてルリシヤの声が聞こえるようになった。

それでも、『frontier』の方がでかい。

「そこ何処にいるんだ?」

『カラオケ』

何で?

「『frontier』の宣伝か何か?」

『盗聴防止だ』

「!」

盗聴という言葉で、俺はハッとした。

ルリシヤ達スパイ組は、連絡用に使い捨ての携帯電話を、いくつも持たせてある。

勿論、一台一台盗聴防止処置を施してある。 

その効果は、『青薔薇連合会』でもお墨付きだ。

それでもなお、ルリシヤが盗聴を警戒して、わざわざ爆音の中で電話をかけてくるなんて。

「…何があった?」

俺は、声を低くして尋ねた。
< 183 / 820 >

この作品をシェア

pagetop