The previous night of the world revolution~T.D.~
自分が、全く『赤き星』の党員達に信用されていないことは。

もとより分かっていた。

彼らがあの部屋で僕を見るときの、その目を見れば分かる。

彼らは、一応僕を『赤き星』に加えはしたものの。

他のメンバー同士のような信頼関係は、全くない。

『赤き星』に入ったからといって、それで終わりではない。

僕は、まだ試されているのだ。

本当に、このルクシア・セレネという人間が、『赤き星』の一員として相応しい人物なのかどうか。

彼らにとっては、まだ試用期間みたいなもの。

今日、図らずも彼らの意見に対立するようなことを言ってしまったのも、裏目に出ている。

ここいらで、挽回しておかなくては。

僕が『赤き星』に相応しくないと判断すれば、彼らは躊躇うことなく、僕を追い出すことだろう。

それだけは避けなければならない。

『赤き星』の内部に入れないなら、わざわざスパイとして潜入した意味がない。

この二作目の論文は、二次試験みたいなものだ。

これを通過しなくては、僕は『赤き星』のメンバーから除名されかねない。

となると、入学時のときのような論文では、不充分だ。

もっと確かに、彼らを納得させられるような論文に仕上げなくては。

面倒だが、出来ないことではない。

相手が悪かったな。

生憎、政治関連の難しい云々かんぬんは、嫌というほど叩き込まれてるんでね。

出来るだけ短時間で、彼らの納得するような論文を書き上げてみせよう。

僕の、腕と頭の見せどころだ。

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