The previous night of the world revolution6~T.D.~
「講演会の企画委員に選ばれたので、各地を転々としてるんですよ」

「へぇ、そうなのか」

勿論嘘だが、これは俺が考えた嘘ではない。

仕事内容について、他の党員に聞かれたときは、そう答えるように、と。

開発チームの全員に、そんな指示が出ている。

無論、ヒイラからの指示だ。

『光の灯台』について、徹底的に秘密にしておきたいらしい。

更に。

「エリアスの方は、何を?」

仕事内容についての話題が出たときは、即座に話題を変える。

これも、ヒイラからの指示だ。

「俺は、ひたすら集金係だよ」

と、苦笑いで答えるエリアス。

お前、まだ札束数えてたのか。

同じルティス帝国総合大学の学生なのに、この差よ。

ルリシヤからの推薦がなかったら、俺も今頃、陰鬱な顔して、一日中札束数えてたんだろうなぁ。

あ、それとも。

「各地を回って、募金を募ってるんですか?」

『ルティス帝国を考える会』にしょっちゅう来ていた、あの派遣員みたいなことをしてるのだろうか。

それならまだ、部屋に引きこもって札束を数えるだけ、という苦行からは開放される。

が。

「いや、俺は本部で数える係」

残念でした。

一日中万札の数ばかり数えていたら、頭おかしくなるだろうなぁ。

まぁ、万札だけじゃなくて、小銭もあるんだろうけど。

それが自分の金なら、夢の札束風呂という妄想に浸れるだろうに。

自分の金じゃない上に、その使い道は粗悪品の武器と、紛い物の研究に注ぎ込まれてるんだからなぁ。

やってられないだろうよ。

「大変ですね」

心から同情するよ。

札束だって、結局、紙切れの束に過ぎない訳だからな。

その紙切れに価値が付与されるから、大事なものになるだけで。

自分が使う訳でもない札束なんて、ただの紙切れだ。

一日中、ただの紙切れの枚数を数える。

想像しただけで嫌になる。

つーか、『光の灯台』を造るほどの技術があるなら、自動で金を勘定出来る機会くらい導入しろよ。

何で、そこだけアナログなんだよ。

さぞやエリアスもうんざりしているだろうと思って、労ってみたが。

しかし、エリアスの頭は、相変わらずお花畑なので。

「そんなことないよ。これもルティス帝国の未来の為に、必要な仕事なんだから」

あ、駄目だ。

完全にこいつ、頭がヒイラ脳に侵されてる。

「それに、お金の管理を任されるなんて、同志ヒイラ総統に信頼されてる証だ。そう思うと、全然大変じゃないよ」

残念でした。

お前、まだ全然信頼されてないよ。

「ルティス帝国の未来の為に、お互い頑張ろうな、ルナニア」

「えぇ。頑張りましょうね」

君の頭が、相変わらずお花畑で。

むしろ、俺は安心したよ。
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