劇薬博士の溺愛処方

ホワイトディ・エチュード



 真っ青な空の下で学生カップルのように手を繋いで、琉は嬉しそうに三葉に声をかける。

「次はこれ乗ろう!」
「えぇ、琉せんせいまた絶叫系ですか?」
「土日に行くと混雑していて乗れないんだぞ。せっかく空いているんだし、楽しまないと」
「ん、それもそうですね!」

 三月十四日木曜日。病院のシフトが休みの琉は、この日のためにと隣県にある遊園地のワンデーパスポートを手配していた。休診日が多い木曜日なら、調剤薬局の仕事もそれほど忙しくないし、月末月初の繁忙期からもはずれているため、三葉も休めると配慮してのことだ。

 先月のバレンタインのあと、叔母にシフトを調整してもらい今日を迎えた三葉は、平日の朝からの健全なデートという社会人になってからは経験することのなかった新鮮な状況に心をときめかせている。クリスマスのときも映画を見たりご飯を食べたりしたが、彼の車に乗せてもらうのは初めてだった。
 早朝からアパートの前まで車で迎えに来てもらい、高速道路に乗って約二時間半。サービスエリアで朝食をとった後、ゆるやかな山道を登れば緑の木々に囲まれた非日常的な世界が顔を出す。
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