劇薬博士の溺愛処方
 ホワイトディだからか、地元の学生カップルの姿が多い。けれども平日の午前中から駅からわざわざバスか車で移動しなければ辿り着けない郊外の遊園地に遊びに来る客の数はまばらで、どこか閑散としている。

 それにいまの季節はスギ花粉のピーク。軽度の花粉症の三葉はマスクにだて眼鏡、つばの深い帽子を被り、事前に眠くなりにくい一日一回の内服薬を飲み、水筒には家から淹れてきた甜茶を用意してこの日にのぞんだ。
 辛いなら室内のアトラクションにするよ、とはじめのうちは花粉症のマスクをしている三葉を気遣ってくれていた琉だったが、彼女がせっかくこの日のために対策してきたのだと言い張ったこともあり、午前中だけでも外のアトラクションを楽しもうということになった。
 都内よりも標高が高いからか、風は冷たい。けれど、あちこちアトラクションをめぐるにつれて寒さは気にならなくなった。
 ジェットコースターにメリーゴーラウンド、海賊船にコーヒーカップ……
 三葉の目元が心底楽しそうにしているのを確かめた琉は、クリスマス以来のデートらしいデートが彼女のお眼鏡にかなったことを確認し、嬉しそうに次の乗り物の列に並ぶ。
 ふたりは子どものように次から次へとアトラクションに挑んでゆく。
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