劇薬博士の溺愛処方

   * * *


「っくしゅ」
「大丈夫? そろそろ室内に入ろうか?」
「で、でもまだぜんぶの乗り物制覇してませんよ?」

 琉先生はせっかくの全休、ふだんはできないことを楽しみたいと言っていたのだ。学生カップルのような平日遊園地デートで全アトラクション制覇とか、子どもに混じってスタンプラリーとか、出店に並ぶホットスナックを買い占めるとか、パレードの列を追いかけ回すとか……

 三葉が首を傾げれば、琉はくすりと笑い、彼女が被る帽子のつばをそうっとめくり、ちゅっ、と額に口づける。

「――!?」
「今日がなんの日か忘れたの?」
「ホワイトディ、ですけど」
「なんだか俺ばっかり楽しんでいるみたいじゃないか。俺は三葉と一緒に楽しみたいんだ……まさかきみがそこまで花粉にアレルギー症状を持っているとは思っていなかったんだよ。ごめんよ、花粉が辛いなら今度は花粉がない時期にまた休みを取って行けばいいんだから」
「いえ、そ、そんな謝らないでくださいせんせ……っくしょんっ!」
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