劇薬博士の溺愛処方

 無邪気に提案する酔っぱらいを前に、三葉は怒りを通り越して呆れてしまう。

「実地、練習って……何おっしゃっているんですか飛鷹先生同じ職場にいた頃だったらセクハラで訴えられるレベルですよ」
「ふふ。冗談だよー、そんなことしたら大倉に殺されちゃうよ僕」
「ですよねー」

 あからさまにホッとする三葉を見て、飛鷹は乾いた笑みを漏らす。どこか傷ついているようにも見える彼の表情に気づくことなく、三葉は言葉をつづける。

「それよりソウゴカンショウってなんですか?」
「あー、それね。お互いに観賞するって意味合いがあるんだけど、つまるところ……うっ、ごめん、ちょっとトイレっ!」

 とつぜん立ち上がった飛鷹がその場でふらついたのを見て、三葉も咄嗟に彼の身体を支えようと長い腕を伸ばす。だが、いくら三葉が一般の女性より大柄だからとはいえ、男女差は明白、彼女の腕ですべてを受け止めることはできない。
 そのまま巻き込まれるようにガクっ、と背もたれのない椅子から崩れ落ちるように身体が落下し、思いっきり後頭部に衝撃が走り。
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