キミを描きたくて
「それ、は…」


なんで、そう言いたげな視線を向ける。
苦しそうに、また涙を流して。

____ああ、俺がこんな顔、させたんだ。

俺が泣かせたんだ。


「会長には、わかるはずないですよ」


「なんでも与えられてきたであろうあなたに」


「樹は、私にとって唯一無二なんです」


「ああ、会長には沢山代わりがいますもんね」


そう言い切ると、また涙が流れる。
俺は咄嗟に依茉を抱きしめていた。


「言うな、もう」

「っ、会長…?」

「悪かった、ごめん。踏み込まれたくなかったんだね」


依茉から臭う香水。
それはきっとハヤトクンのやつで、こんなに濃く着いているということは、きっと抱きしめられでもしたのだろう。

…でも、そんなことは今どうだっていい。

依茉にとって聞かれたくないことを、無理に聞いて泣かせてしまった。
それは俺が明らかに悪い。

依茉にとって特別な"イツキ"。

依茉の替えなんているわけないのに。


「いい、俺はどんなに依茉がほかの男を好きっていって逃げたいって言ったって、逃がしてやらない」

「…でも、女避けじゃ、」

「うるさい。察しが悪くでも、いい加減わかるだろ。」

「……」

「ハヤトクン…だっけ?が好きだろうが、俺は逃がしてやんない」


そう、死ぬまでも、死んでからも逃がしてやらない。
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