キミを描きたくて
「綺麗だったね、花火」


帰り道、手は繋いだままで並んで歩く。
辺り一面はカップルだらけで、私達も混じるかのように歩く。


「また描きたいものが増えたよ」

「ふふっ、依茉ちゃんはほんとに絵ばっかりだなあ」

「私には絵と樹しかないから。…それと、隼人くんの入れてくれるコーヒー」


そう恥ずかしげに呟く。
恥ずかしげに、というのはあくまで客観視した自分で、自分がどう考えているのかは分からない。

"誰が好き"か。

前に、紫月くんが投げた質問。

私がこうして横に並びたい人間は、もう決まりかけているのかもしれない。
でも、その気持ちは叶えちゃいけない。

描く、それだけでいい。


「出会った頃の依茉ちゃんはコーヒーに砂糖を沢山入れてたけど、ブラックも飲めるようになったね」

「あのころは、子供だったから」

「今だって変わらないよ。ごく普通の女子高生。」

「…いいや、変わってるよ」


虚しい抵抗。
私は大人へと背伸びして指をスレスレにつけているだけで、この背の低さといい、精神年齢は変わらない。

それはきっと、樹が居なくなったと知ったあの日から。

…でも、今はいると知った。
私は、まだ変われるだろうか?

私は、絵以外も愛せるようになるだろうか?
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