キミを描きたくて
「依茉ちゃんは絵を描いている時、何を考えてるの?」

「それはもちろん、色彩のコンストラストや配置、比率、それから____」

「そうじゃなくて。誰を想像して抽象画にしてるの?」


"あぁっ…ゆずちゃん、お水が飲みたいの?"
"ハーフ?可愛いね"

仲良さそうな家族の会話や、繁華街の酔っ払い。
私は人々の黒い面と明るい面を描く。

…いや、しっくり来ない。

私は、誰を描いている?


「難しい質問だったかな」

「……」

「大丈夫だよ、そんなに深く考えることはない。さ、夜も遅いし早く帰っちゃおう。」


もう多分いるんでしょ?と聞くのは、きっと紫月くんのこと。

何を話すつもりなんだろう。
何を起こすつもりなんだろう。

私はこのふたりの組み合わせがどうも怖くて仕方がない。

片方は、代わりと言えども付き合っている身。
もう片方は、ただの友人関係としか言えない。

…でもきっと、隼人くんは私のことを"友達"だなんて思っていない。

男女の友情は成立しない。
私が自分の思いに正直になったときに、全て崩れ落ちてしまう。


「うん、帰ろうか」

「いやぁ〜…楽しみだなぁ」


そう笑った顔は、とても真っ黒だった。
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