愛は愛より愛し
こういうのほいほい乗れたら、可愛げもあるし計算高く生きていけただろうに。
凝り固まった十代の頃の概念に未だ縛られているなんて。本当に、もう若くもないのに。
「そこまでされるほど、何か力になれたわけでもありませんし」
やんわりと角の立たない断り方。社会人になって学んだことのひとつ。
「……そうですか」
名刺を素直に受け取り、世名はしまった。じゃあ、と顔を上げる。
「その蕎麦とコーヒーの料金、払わせてください。それなら良いですか?」
「え、あ、あー……まあ、じゃあ、お願いします」
それ以上引かなそうな勢いに私は負けた。