愛は愛より愛し
返答すると世名は顔色を変え、コーヒーを持たない手で私の左手を取った。
あまりの速さに驚き、その意図を探る。
「……結婚してるの?」
指をまじまじと見られた。
つけられてもいない指輪を探したらしい。
「独身、ですが」
「あ、実家暮らしですか?」
「妹たちと住んでます」
「びっくりしたー、それは帰りを待たれてますね。気をつけて帰ってください」
手が離された。
にこ、と微笑まれ、初めて意志を尊重した言葉をかけられ、私は頷く。
「はい。では、お仕事引き続き頑張ってください」
私は駅の方へと踵を返した。
が、ぐいと手首を取られ、その勢いに後ろへ倒れそうになる。