【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
第一章 聖女選抜試験

1.少女はもふもふを見捨てられない



 神殿へと続く、森の小道。
 最初に見えたのは、薄暗い茂みの中からわずかにのぞく白銀色の尻尾だった。

 長い。
 そして、ふさふさだ!

 木の陰からそっと近づくと、白っぽい巨大な塊が横たわっている。
 尖った三角形の耳に、長めの鼻面。目は閉じているが、息はあるようだ。

 犬にしては大きすぎる。
 もしかしたら、狼……?

 この辺りで見かけたという話は聞かないけれど、どこかから迷いこんできたのだろうか。
 ピクリとも動かないせいか、それともここが神殿の森だからか、その巨体にそれほど怖さは感じなかった。特に白狼は警戒心が強く、滅多に人間を襲わないらしい。
 でも、やはり早めに街区長さんに報告して、なんとかしてもらわなければ。

「モーリーン、あの、お願いしたいのだけど、街まで戻って街区長さんに……」
「いやよ」

 後ろから軽い足取りで歩いてきた妹に声をかけると、そっけなく断られた。

「でも……」
「白狼? おお怖っ!」
「わたしがここで見張っているから……」
「早く神殿に行かないと、聖女選定の儀が受けられなくなるじゃない。あたしが、みんなの待ち望んでいる聖女かもしれないのよ?」
< 1 / 294 >

この作品をシェア

pagetop